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不整脈と漢方薬
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   不整脈と漢方


不整脈の概説

不整脈とは、心拍数が異常に多い(頻脈)、または少ない(徐脈)ことにより、あるいは電気刺激が異常な伝導経路をとることにより、心拍リズム(脈拍)が不規則になった状態です。
心臓は普通、およそ規則正しくうつものですが、これが速くなったり遅くなったり、または間隔が乱れるのが不整脈です。不整脈は手くびで脈を触ってみると分かります。不整脈は心臓の病気で来ることもあり、心臓が健全な人に起こることもあります。
心臓は右心房、左心房、右心室、左心室という4つの部屋(心腔)をもつ筋肉質の臓器で、一生を通じて、効率的に、確実に、絶え間なく働き続けるように作られています。拍動するたびに、各心腔の筋肉の壁(心筋)は規則正しく収縮して、できるだけ少ないエネルギーで体に必要な量の血液を送り出す一方、弛緩して血液を満たします。
このような心臓の筋線維の収縮と弛緩は、心臓内を決まった経路に沿って正確に調整された速度で伝わる電気刺激によって制御されています。この電気刺激は、心臓の生体ペースメーカー部である、右心房の先端に存在する洞房結節から起こります。そして、洞房結節から電気刺激が起こる速度(放電速度)が、拍動の速さ(心拍数)を決定します。放電速度は、神経刺激や血液中の特定のホルモン濃度に影響されます。
したがって、心拍数は、交感神経と副交感神経からなる自律神経系によって自動的に調節されています。交感神経は、交感神経叢(こうかんしんけいそう)と呼ばれる神経のネットワークを介して心拍数を増加させます。副交感神経は、迷走神経という単一の神経を介して、心拍数を減少させます。また、心拍数は交感神経から血流内に放出されるホルモン、エピネフリン(アドレナリン)とノルエピネフリン(ノルアドレナリン)にも影響され、増加します。同じく、甲状腺から血流に放出される甲状腺ホルモンも、心拍数を増加させます。
成人の安静時の正常な心拍数は、通常毎分60~100回です。しかし、若い成人で、特に身体的に健康な人では、これより心拍数が少なくても正常であることもあります。運動や痛み、怒りなどの刺激に反応して、心拍数が変化することは正常です。ただし、心拍数が不適切に速くなったり(頻脈)、遅くなったり(徐脈)している場合、あるいは電気刺激が異常な伝導経路で伝わり心拍数が不規則になっている場合の心拍数の変化は異常と考えられます。


不整脈のメカニズム

心臓の生体ペースメーカー部(洞房結節)からの電気刺激が、まず右心房と左心房を通って流れ、これら各心房の筋肉質の壁を収縮させることにより、血液が心房からその下の心室に送りこまれます。次に、電気刺激が、心室近くの心房間の壁の下方にある房室結節に伝わります。
心房は、電気を通さない組織によって心室から隔離されていますが、その中にあって、房室結節が心房と心室をつなぐ唯一の伝導路として存在しています。この房室結節が、心房から心室への電気刺激の伝導を遅らせるために、心房は完全に収縮でき、心室は収縮信号を受け取る前に可能な限り多量の血液を満たすことができます。

その後、房室結節を通過した電気刺激が、線維の束であるヒス束へ伝わります。ヒス束は左心室へ向かう左脚と右心室へ向かう右脚に分かれていることから、電気刺激が心室の表面全体を覆うように下方から上方へと広がり、それにより心室が収縮し、心臓から血液が送り出されます。

不整脈の分類

1.呼吸性不整脈
若い人で脈を触れてみると、速くなったりおそくなったりして、くり返しているのに気づくことがあります。大きく息をすると、もっと不整になります。これは呼吸性不整脈と呼ばれるもので、心臓の病気とは関係がありません。深呼吸をゆっくりするとき、深く吸ったときには脈が速くなり、強く息を吐いたときには脈がおそくなる傾向があります。心臓が毎分100以上もうち、速いことを“頻脈[ひんみゃく]”、60以下とおそいことを“徐脈[じょみゃく]”といいます。心臓への負担のかかりかたによって、健康な人でも頻脈になったり徐脈になったりします。たとえば、一生懸命走っているときは、若い人では毎分150くらいの脈になり、熱が出て代謝の高まったときも、速くなるのがあたり前のことなのです。また、寝ているときには脈がおそくなり、毎分40~50くらいになる人も珍しくありません。ふつうの日常生活では、だいたい毎分50~100の間くらいに調節されているので、これを正常の脈と考えています。

2.期外収縮
寝不足のときや、たばこをすいすぎたりしたとき、脈が結滞することがあります。これは期外収縮です。期外収縮が続いて起こると、心臓がドキドキしたり、踊るように感じたり、心臓が一時とまったように感じたり、すっと血が引くように感じたりすることがあります。心臓のたいへんな病気だと思い込み、心臓神経症のもとになることもあります。
期外収縮は健康者にもしばしば起こり、無害ですが、心臓病の唯一の自覚症として起こることもあります。発熱を伴う病気またはそのあと、高血圧や動脈硬化のあるとき、この脈の結滞に気づいたら、心臓のくわしい検査を受けたほうがいいでしょう。
静かにしているときだけ脈の結滞を感じるのは比較的危険が少なく、運動しているときや負担がかかったときに動悸がしたり、脈が抜けたり、苦しくなったりする場合には注意を要します。

3.絶対性不整脈心房細動
弁膜症の人やバセドー病の人、また老人で冠状動脈硬化症の人などで、脈がまったく不整になることがあります。絶対性不整脈といいます。このときは、心房の収縮がむやみに速く、ブルブルふるえるようで、ふつうの収縮をしないところから、“心房細動”とも呼ばれています。この速い心房の収縮は、全部が心室に伝わるわけでなく、まったく不規則に伝わるので、脈が不規則になるものです。
発作中の脈(心室の収縮)が比較的規則正しく1分間に150回うっている心房粗動(心房粗動の2:1ブロック)では、心房は1分間に300前後もうちます。心房細粗動が急に起こると、動悸や胸が苦しく感じることもありますが、この状態が長く続いているときは、だんだんに慣れて、自分ではなんともなくなるのがふつうです。
心房細動は一度起こると、一生続くことが多く、“恒久性不整脈ともいわれます。しかし、しばらく続いてもとに戻ることもあり、くり返して起こる場合はがむずかしいことが多いのですが、鍼灸や薬物(キニジン、プロカインアミド、ジソピラミド、フレカイニド、プロパフェノン、ベラパミルなど)の薬でして不整脈がとれることもあります。
また、直流除細動器という器械で、心臓に電気ショックをかけて不整脈をとめる方法もあります。最近、心房の興奮伝導を切って心臓のリズムをもとどおりにする手術(メイズ法)もおこなわれます。
高齢者や弁膜症の人で心房細動になっているときは、不整脈そのものよりは心不全のほうが重大ですから、心不全のおそれがあればジギタリス製剤を使います。
また、まれに脳卒中(脳塞栓)などの塞栓症を起こすことがあります。特に僧帽弁の病気があるときによく起こるので、抗凝血薬を使って予防することもあります。この場合には、常々医師の指示を受けて、薬を調節し、を続けなければなりません。

4.発作性頻拍症
ふだんなんともなくて、急に脈が数えられないほど速くなる病気があります。発作性頻拍症といいます。始まりは予感のあることもありますが、ふつうは、なにかの拍子に突然始まり、発作がやむときも急にやむのです。深い息をしたり、きばったりすると、とまることもあります。発作中は動悸がし、息苦しくなります。30分以上も続くと、急に尿意が起こることもあります。まれに、ひどい症状を起こすこともありますが、ふつうは、長く続きさえしなければ無害です。
自分では、まったく発作に気がつかない人もいます。心臓にはなんの病気もない場合が多く、WPW症候群という生まれつきの異常で起こってくることもあります。もともと心臓病があって起こる場合、ことに心筋梗塞の発症とともに起こる場合は、心室頻拍などできわめてわるい状態ですから、すぐしなければなりません。
は、心房から生ずる頻拍症では、ATP、ジギタリス製剤、プロカインアミド、心室からの頻拍症ではリドカインなどの注射を受けます。無害な型の発作では、いきんだり、くびの頸動脈洞のところを強くマッサージしてもとまることがあります。心房や心室の頻拍発作を起こす興奮伝導経路があって、失神発作をくり返す人にはこの経路を焼き切るカテーテル電気焼灼法や手術で切る方法がすすめられます。また頻拍が停止しないと、直流除細動器が使われる場合もあります。

5.アダムスストークス症候群
脈がはなはだしく少なくなる病気もあります。1分間に40とか30とかいう程度になります。スポーツマンで、ふだん50くらいの人はいくらでもいますが、40以下は異常です。高齢者ではふつう、刺激伝導系の変性や冠状動脈硬化、若い人だとリウマチやウイルス感染で起こることが多いのです。これらの病気のため、心臓の興奮が心房から心室へうまく伝わらないために起こります(心臓ブロックまたは房室ブロック)。神経の緊張で一時的に起こることもあります。
また高齢者では、心房も動かなくなる“洞停止”や“洞房ブロック”と呼ばれる状態も起こります。ひどいブロックの場合、そのために心室の収縮がしばらくとまって、脳に血液が行かず、失神したり、けいれんを起こしたりします。これは、アダムスストークス症候群といわれます。この場合には、入院して、心臓ブロックの起こっている場所とその原因をよく調べてから法を決めますが、人工ペースメーカーが有効です。
とりあえず一時的に、ペースメーカーを使用して危急を救い、慢性の場合には、からだの中へ電池つきのペースメーカーを植え込んで、この電気刺激によって心臓をはたらかせることになります。
心房から心室に伝わった興奮は、右心室と左心室に分かれてそれぞれ伝わります。右心室へ伝わる伝導系を右脚、左心室へ伝わる伝導系を左脚といいますが、この部分に変性や障害が起こると、“右脚ブロック”や“左脚ブロック”と呼ばれる状態になります。
この場合には、心臓はとまりませんが、両側のブロック(両脚ブロック)が起こると、房室ブロックと同じように心臓がとまることもあります。右脚ブロックは、健常人にも特別な原因がなく起こることがありますが、心臓に重い病気があるときにも起こるので、一度専門医の診察を受けて、原因となる心臓の病気がないかどうかを確かめてもらうのがよいでしょう。右脚ブロックも左脚ブロックも、心電図で診断されます。

不整脈の原因

不整脈の起こる主な原因は、
1.冠動脈疾患、心臓弁障害、心不全などの心疾患による不整脈。
2.薬による不整脈。
3.先天性心疾患による不整脈。
4.心臓の伝導系に加齢による不整脈。
5.甲状腺ホルモンによる不整脈。

しかし、不整脈の原因を特定できないこともあります。心拍数が増加するような不整脈、つまり頻脈性不整脈は、運動、精神的ストレス、過度の飲酒、喫煙、かぜや枯草熱の薬など刺激物質を含む薬などによって誘発されます。心拍数が減少するような不整脈、つまり徐脈性不整脈は、迷走神経を過度に刺激するような痛み、空腹、疲労、下痢や嘔吐などの消化器系障害、嚥下などによって誘発されます。まれなケースですが、迷走神経が強く刺激されすぎると心臓が停止してしまうこともあります。ただし、多くの場合、このような不整脈は自然に消失します。

不整脈の症状

心拍動に異常があることは、動悸として自覚できます。しかし、動悸の感じ方は、人によって異なります。中には正常な心拍動ですら、異常と感じる人もいます。左側を下にして横になると、ほとんどの人が心拍動を感じます。
不整脈には無害なものから命にかかわるものまで、幅広くさまざまな種類があります。不整脈の重症度は、その症状の重症度とあまり関係ありません。命にかかわる不整脈でも症状がみられない場合もありますし、一方で、無害な不整脈でも重篤な症状がみられる場合があります。不整脈そのものよりも、その原因となっている心疾患の特性や重症度の方が重要です。
不整脈によって、心臓の血液を送り出す能力が損なわれる(心拍出量の低下)と、体力低下、運動能力の低下、ふらつき、めまい、失神などの症状が現れます。失神は、心臓から送り出される血液が適切な血圧を維持できないほど少なくなったときに起こります。このような不整脈が続けば、結果として死に至ることがあります。また、その原因となっている心疾患の症状、たとえば胸痛や息切れを悪化させることもあります。前述したような症状のある不整脈は、早急にする必要があります。

不整脈の検査と診断

心電図検査(ECG)は、不整脈を診断して原因を確定するための主な検査方法です。この検査では、心拍ごとに生じる電気刺激がグラフで示されます。普通の心電図検査はとても短時間で終わります。不整脈は、しばしば間隔を空けて起こることがあるため、継続的に、あるいは体につけた電極が不整脈を感知したときに心拍リズムを記録する携帯型心電計(ホルター心電計)を使用します。持続的なホルター心電図は普通24時間実施するため、日常の活動に従事している間に発生する散発的な不整脈を記録できます。なお、患者は、ホルター心電図実施中に、不整脈と関連する症状や活動を記録しておきます。
命にかかわる不整脈が疑われる場合は、普通、入院します。このような場合は緊急事態に即座に対応できるように、心拍リズムを継続的に記録するとともに、ベッドサイドあるいはナースステーションに置かれたモニター画面で監視します。
診断を確定するための他の検査には、運動中に心電図検査と血圧測定を行う運動負荷試験と電気生理学的検査があります。電気生理学的検査では、先端に小さな電極のついたカテーテルを静脈に入れて心臓まで挿入します。カテーテルの電極を通じて心臓を電気刺激し、そのときの心臓の反応をモニターで確認することで、どの不整脈であるかが見極められ、法を決定することができます。
ほとんどの不整脈は、症状を引き起こすことも、血液を送りだす心臓のポンプ機能を損なうこともありません。しかし、特定の不整脈は、それ自体には害がないにもかかわらず、より重症の不整脈を引き起こすことがあります。不整脈により、血液を送り出す心臓のポンプ機能が損なわれ、十分な量の血液を送り出せなくなると重症です。重症度は、不整脈が洞房結節、心房、心室のどこを起源としているかによってある程度決定できます。一般的には、心室を起源とする不整脈が最も重症で、ペースメーカー部を起源とする不整脈よりも重症な心房を起源とする不整脈よりも、さらに重症です。ただし、例外もたくさんあります。

不整脈の西洋医学

不整脈の中でも放置しておくと命にかかわるようなものは、直ちにが開始されます。不整脈の法には薬物と非薬物とがあります。薬物は、抗不整脈薬と呼ばれる不整脈を抑制する力のある薬剤を使用します。非薬物には、電気ショック(最近話題となっている自動体外式除細動器〈AED〉もその1つです)により不整脈を停止させる方法や、電極カテーテルを心臓内に挿入し、電気信号を体外より送り不整脈を停止させたり、脈が遅い場合ではこの電気信号で脈を維持する(体外ペーシング)方法などがあります。  緊急性がない場合には、自覚症状の程度、不整脈の重症度、背景にある心疾患の程度などを参考にして、まず第一にの必要性の有無を判断します。一般には、自覚症状がなく、不整脈以外に特別な心疾患がない場合には、はせずに様子をみることになります。  法には、やはり薬物と非薬物とがあります。非薬物には、脈拍数が低下する徐脈性不整脈に対するペースメーカー植え込み術、逆に増加する頻脈性不整脈に対する電気的焼灼(しょうしゃく)術などがあります。心室細動や心室頻拍といった重症心室性不整脈を認め、急死する可能性が高い場合には植え込み型除細動器(ICD)が必要となります。

「メイズ法」

メイズとは迷路の意味です。不整脈のうち、心房細動はなかなか治りにくい病気で絶対性不整脈ともいいます。そのために生活が思うようにできず、息切れなどで運動が制約されており、薬も効かず、直流除細動という電気ショックもたびたびおこなうことができないとき、この手術をします。
心房細動は、心房の電気的興奮がグルグル回る(回旋といいます)ことによって起こっているので、その回旋路を断つために、胸部を切開し、心臓を直視しながら、心房を迷路状に切開する手術の方法がメイズ法です。
大きな手術ですので、その代わりに静脈からカテーテルを心房へ挿入し、レーザー光線や電気凝固によってメイズ法と同じ効果を期待する、アブレーション法(電気焼灼法)がおこなわれることもあります。








中医学ではその病名だけではなく、症状や体格体質など(「証」と言います)をみて処方を決めます。
「証」に応じた処方を行うことにより、さらに様々な自覚症状が改善されていきます。

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