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難病特集:サルコイドーシス
       


サルコイドーシスに対する漢方医学漢方薬の効果と経験症例
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‖定義
サルコイドーシスは原因不明の他臓器疾患である。若年(20~30代)と中年40~50代)に好発し、両側肺門リンパ節、肺、 眼、皮膚の罹患頻度が高いが、神経、筋、心臓、腎、骨、消化器などの臓器も罹患する。特に治療上注意すべき臓器は眼、肺、心、神経、腎などquality of life や予後に関係する臓器の障害は十分な管理が必要である。
‖疫学
発症率には地域差があり北に多く南に少ない。我が国の推定有病率は人口10万対7.5~9.3で、罹患率は平均0.7である。
‖病因
原因は不明であるが、抗酸菌、α溶連菌、P.acnesなどが原因菌として提唱されている。しかし、何れも確証されていない。
‖症状
本症発見時約1/3は無症状である。霧視羞明飛蚊視力低下などの眼症状で発見される場合が最も多く、次いで皮疹、咳、全身倦怠が多い。その他、発熱、結節紅斑、関節痛などがある。
‖診断
多く(60~70%)は臨床症状「眼症状(視力低下、霧視、飛蚊等)、呼吸器症状(咳、呼吸苦等)、心症状(不整脈等)、皮疹」と胸部X線所見、眼所見に加え、罹患部位から採取した組織標本に非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫を認めれば、確実となる。しかし無症状で検診で発見される症例もあり組織検査で診断される事もある。但し、既知の原因による肉芽腫と局在性サルコイド反応は除外する。診断基準は厚生省特定疾患「びまん性肺疾患」調査研究班昭和63年度研究報告書1989年がある。
免疫学的には全身反応としての遅延型反応(皮膚のツベルクリン反応等)の低下、病変局所の遅延型反応の亢進(BAL,病変組織におけるCD4/CD8比の増加等)が認められる。一方B細胞の活性化を示唆する所見として、血中免疫グロブリン増加や免疫複合体が認められることもある。
検査所見としては血清ACE(angiotensin converting enzyme)活性の上昇、胸部X線胸部CTに加え67Gauptakeの増加、Ca代謝異常、蛍光血管造影所見の異常(気管支鏡下)、その他腹部臓器(肝、脾、腎)、神経筋病変等ではCT検査、MRI検査が有用である。また眼障害、心障害の検査所見は厚生省特定疾患「びまん性肺疾患」調査研究班の眼サルコイドーシス診断の手引き1990年平成元年度研究報告書、心臓サルコイドーシス診断の手引き1992年平成4年度研究報告書を参照されることが望ましい。
‖治療
原因不明の現在は根治療法はない。多くの症例では無治療で経過観察され、臓器障害のために日常生活が障害される症例(自覚症状の強い症例)や、将来生命の予後が危ぶまれる症例(中枢神経病変、心病変等、腎病変))に限って治療が現在行われている。また治療薬としては病態より考へ、ステロイドホルモンによる治療が最善と考えられている。しかし、再発症例も多く、二次治療薬としての免疫抑制剤の使用も考慮されている。現在日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会と厚生省の厚生科学研究特定疾患対策事業びまん性肺疾患調査研究班の合同による委員会で「新サルコイドーシスの治療に関する見解」を検討中で近い将来発表の予定である。
‖予後
一般には発病様式と病変の拡がりが関与する。結節性紅班を伴う急性発症症例(発熱、関節痛を伴う症例もある)や無症状の両側肺門リンパ節腫脹を示す症例は通常は自然経過で消退する症例が多い。一方潜行性発症例、特に他臓器病変のある症例は慢性に進行する症例が多く、一部は肺やその他の臓器の線維化に進展する症例も見られる。本症の多くは自然寛解か、治療によって軽快または治癒するが、約10%の症例が進行性、難治症例となる。日本では死亡例は非常に少ない。
‖診断基準と診断の手引き(2006要約)
サルコイドーシスは原因不明の全身性(多臓器性)肉芽腫性疾患で,その病理像は類上皮細胞肉芽腫を特徴とする.診断に際しての基本は,1.非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を確認すること,2.各臓器に特徴的な臨床所見を認めること,3.サルコイドーシスに頻度の高い全身検査所見を認めることの3条件を中心に検討することが重要である.しかし3条件は共にサルコイドーシスに特異的な所見ではないので,診断に際しては除外診断が重要な検討項目となる.また一部の症例では,下記の基準を満たさない症例(一臓器のみにサルコイドーシスを強く疑う臨床所見が認められる症例など)があるが,そのような場合は疑診として長期の経過観察を行うことが重要である.また,治療との兼ね合いで,疑診でも生命の危険が想定される場合は治療的診断として,診断に先行して治療を行う場合があることも付記する.以下は要約であり,詳細は日サ会誌(第27巻1号 2007年,89頁~102頁),日呼吸会誌(46巻9号2008年,768頁~780頁)を参照されたい.
<A>診断基準
サルコイドーシスの診断は組織診断群と臨床診断群に分け下記の基準に従って診断する.
1.組織診断群
一臓器に組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認め,かつ,下記1)~3)のいずれかの所見がみられる場合を組織診断群とする.
1) 他の臓器に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認める.
2) 他の臓器で「サルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見」(診断の手引き参照)がある.
3) 表1に示す検査所見6項目中2項目以上を認める.

表1.全身反応を示す検査所見
1) 両側肺門リンパ節腫脹
2) 血清ACE活性高値
3) ツベルクリン反応陰性
4) Gallium-67 citrateシンチグラムにおける著明な集積所見
5) 気管支肺胞洗浄検査でリンパ球増加またはCD4/CD8比高値
6) 血清あるいは尿中カルシウム高値
2.臨床診断群
組織学的に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫は証明されていないが,2つ以上の臓器において「サルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見」(診断の手引き参照) に相当する所見があり,かつ,前記の表1に示した全身反応を示す検査所見6項目中2項目以上を認めた場合を臨床診断群とする.
3.除外診断
他疾患を十分に除外することが必要である.除外項目については「診断の手引き」の記載を参照し検討する.

<B>診断の手引き
各臓器病変における「サルコイドーシス病変を強く示唆する臨床所見」を以下に示す.

1.呼吸器系病変を強く示唆する臨床所見 
1) 両側肺門リンパ節腫脹(BHL)を認める場合.
2) 両側肺門リンパ節腫脹(BHL)は認めないが,表2のいずれかの所見を認める場合.
表2.胸部画像気管支鏡所見
1.胸部X線所見
1) 上肺野優位でびまん性の分布をとる肺野陰影. 粒状影,斑状影が主体.
2) 気管支血管束周囲不規則陰影と肥厚.
3) 進行すると上肺野を中心に肺野の収縮を伴う線維化病変をきたす.

2.CT/HRCT所見
1) 肺野陰影は小粒状影,気管支血管周囲間質の肥厚像が多く見られ,局所的な収縮も伴う粒状影はリンパ路に沿って分布することを反映し,小葉中心部にも小葉辺 縁部(胸膜,小葉間隔壁,気管支肺動脈に接して)にも見られる.
2) 結節影,塊状影,均等影も頻度は少ないが見られる. 胸水はまれである. 進行し線維化した病変が定型的な蜂窩肺を示すことは少なく,牽引性気管支拡張を伴う収縮した均等影となることが多い.

3.気管支鏡所見
1) 網目状毛細血管怒張(network formation)
2) 小結節
3) 気管支狭窄
‖ 除外診断
慢性ベリリウム肺,じん肺,結核および感染性肉芽腫症,悪性リンパ腫,他のリンパ増殖性疾患,過敏性肺炎,ウエゲナー肉芽腫症,転移性肺腫瘍,アミロイドーシスなどを除外する.
2.眼病変を強く示唆する臨牀所見
下記の表3に示す眼所見の6項目中2項目以上有する場合に眼病変を疑い,診断基準に準じて診断する.
表3.眼所見
1) 肉芽腫性前部ぶどう膜炎(豚脂様角膜後面沈着物,虹彩結節)
2) 隅角結節またはテント状周辺虹彩前癒着
3) 塊状硝子体混濁(雪玉状,数珠状)
4) 網膜血管周囲炎(主に静脈)および血管周囲結節
5) 多発する蝋様網脈絡膜滲出斑または光凝固斑様の網脈絡膜萎縮病巣
6) 視神経乳頭肉芽腫または脈絡膜肉芽腫
その他の参考となる眼病変:角結膜乾燥症,上強膜炎強膜炎,涙腺腫脹,眼瞼腫脹,顔面神経麻痺
‖ 除外診断
結核,ヘルペス性ぶどう膜炎,HTLV-1関連ぶどう膜炎,ポスナーシュロスマン症候群,ベーチェット病,眼内悪性リンパ腫などを除外する.
3.心臓病変を強く示唆する臨床所見
下記の表4示す心臓所見を主徴候と副徴候に分け以下1),2)のいずれかを満たしかつ表1の全身反応を示す検査所見うちの1項目以上を満たす場合をいう.
1)主徴候4項目中2項目以上が陽性の場合.
2)主徴候4項目中1項目が陽性で,副徴候5項目中2項目以上が陽性の場合.
表4.心臓所見
(1)主徴候
(a)高度房室ブロック
(b)心室中隔基部の菲薄化
(c)Gallium-67 citrateシンチグラムでの心臓への異常集積
(d)左室収縮不全(左室駆出率50%未満)

(2)副徴候
(a)心電図異常:心室不整脈(心室頻拍,多源性あるいは頻発する心室期外収縮),右脚ブロック,軸偏位,異常Q波のいずれかの所見
(b)心エコー図:局所的な左室壁運動異常あるいは形態異常(心室瘤,心室壁肥厚)
(c)核医学検査:心筋血流シンチグラム(thallium-201 chlorideあるいはtechnetium-99m
methoxyisobutylisonitrile, technetium-99m tetrofosmin)での灌流異常
(d)Gadolinium造影MRIにおける心筋の遅延造影所見
(e)心内膜心筋生検:中等度以上の心筋間質の線維化や単核細胞浸潤
付記:
1) 虚血性心疾患と鑑別が必要な場合は,冠動脈造影を施行する.
2) 心臓以外の臓器でサルコイドーシスと診断後,数年を経て心病変が明らかになる場合がある.そのため定期的に心電図,心エコー検査を行い経過を観察する必要がある.
3) Fluorine-18 fluorodeoxyglucose PETにおける心臓への異常集積は,診断上有用な所見である.
4) 完全房室ブロックのみで副徴候が認められない症例が存在する.
5) 心膜炎(心電図におけるST上昇や心嚢液貯留)で発症する症例が存在する.
6) 乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が,心筋生検で観察される症例は必ずしも多くない.
‖ 除外診断
巨細胞性心筋炎を除外する.
4.皮膚病変を強く示唆する臨床所見
サルコイドーシスの皮膚病変の診断には組織所見が必要である.以下表5に皮膚病変の臨床所見を示す.
表5.皮膚所見
臨床症状
1)皮膚サルコイド:特異的病変
1.結節型:隆起性病変で浸潤のある紅色の丘疹,結節である.        
2.局面型:環状あるいは斑状の非隆起性病変である. 環状皮疹は遠心性に拡大する病変で,中央部は正常皮膚色でやや萎縮性を呈し,辺縁は紅色でわずかに堤防状に隆起する. 斑状病変は類円形あるいは不整形の紅斑である.
3.びまん浸潤型:しもやけに類似した皮疹で,暗紅色の色調で,びまん性に腫脹する.
しもやけの好発部位である指趾,頬部,耳垂に好発する.
4.皮下型:種々の大きさの弾性硬の皮下結節で多発することが多い. 通常被覆皮膚は正常である.
5.その他
a)苔癬様型:粟粒大の扁平小丘疹が集簇性に多発し,時に全身に播種状に出現する. 時に毛孔一致性に生じる.
b)結節性紅斑様:結節性紅斑に類似した臨床像であるが,組織学的に類上皮細胞肉芽腫を認める病変である.
c)魚鱗癬型:魚のうろこ状の皮疹で,下腿に好発する.
d)その他のまれな症状:乾癬様病変,疣贅様病変,白斑.

2)瘢痕浸潤:異物を伴う肉芽腫病変
外傷など外的刺激を受けた部位に生じ,瘢痕に応じて種々の臨床像を示す. 膝蓋,肘頭,顔面に好発する.

3)結節性紅斑:非特異的病変 
淡紅色の有痛性皮下結節で下腿に好発する.
‖ 除外診断
1)他の皮膚肉芽腫を除外する:環状肉芽腫,Annular elastolytic giant cell granuloma,リポイド類壊死,Melkerson-Rosenthal症候群,顔面播種状粟粒性狼瘡,酒さ,皮膚結核など.
2)異物,癌などによるサルコイド反応を除外する.
5.神経筋病変を強く示唆する臨床所見
下記の表6に示す神経筋病変を強く示唆する臨床所見を有する場合をいう.画像を含めた検査のみにおいてサルコイドーシスの神経筋病変が示される無症候性のものと,症候性のものがある.診断に際しては以下の条項を使用してもよい.
1)Definite群:神経筋に組織所見が得られ,全身反応を示す検査所見6項目中2項目を満たすもの.
2)Probable群:神経筋以外の他臓器に組織所見を認め,全身反応を示す検査所見6項目中2項目を満たすもの.
3)Possible群:全身反応を示す検査所見6項目中2項目を満たすが,いずれの臓器にも組織所見を確認できていないもの.
表6.神経筋所見
1 無症候性

2 症候性
2-1) 中枢神経
a. 実質内肉芽腫性病変
a-1限局性腫瘤病変, a-2びまん性散在性肉芽腫性病変, a-3脊髄病変
b. 髄膜病変
b-1髄膜炎髄膜脳炎, b-2肥厚性肉芽腫性硬膜炎,
 c. 水頭症
 d. 血管病変
d-1血管炎(精神症状,錐体路症状,記銘力症状,痴呆など),d-2脳室周囲白質病変(精神症状,痴呆など),d-3静脈洞血栓症(偽性脳腫瘍など)
e. 脳症

2-2) 末梢神経
a. 脳神経麻痺
a-1 顔面神経麻痺,a-2 舌咽迷走神経障害,a-3 聴神経障害,a-4 視神経障害,a-5 三叉神経障害,a-6 嗅神経障害,a-7 その他の脳神経の障害
b. 脊髄神経麻痺
b-1 多発性単神経炎,b-2 多発神経炎,b-3 単神経麻痺,b-4 その他の障害:神経根障害,馬尾症候群など

2-3) 筋
a. 急性~亜急性筋炎型
b. 慢性ミオパチー
c. 腫瘤型ミオパチー

‖除外診断
本文「5.神経筋病変の診断の手引き」に示した他の神経筋疾患を十分に除外すること.
6. その他の臓器病変を強く示唆する臨床所見
下記の表7に示すその他の臓器病変を強く示唆する臨床所見を有する場合をいう.しかし画像を含めた検査のみにおいてサルコイドーシスのその他の臓器病変が示される無症候性のものも含む.

表7.その他の臓器所見
1) 肝病変:肝表面の結節,肝多発性低吸収域
2) 脾病変:脾腫,脾機能亢進症,脾表面の結節,脾多発性低吸収域
3) 腎病変:高カルシウム血症,腎尿路結石,腎腫瘤
4) 消化管病変:潰瘍,粘膜肥厚,隆起などの透視,内視鏡所見
5) リンパ節病変:表在性リンパ節腫大,腹腔内リンパ節腫大,縦隔リンパ節腫大
6) 甲状腺病変:甲状腺腫
7) 耳下腺病変:耳下腺腫大
8) 上気道病変:上気道腫瘤
9) 骨病変:骨梁減少,のう胞状骨透亮像
10) 関節病変:急性関節炎症状,慢性関節炎症状
11) 生殖器病変:生殖器腫瘤
12) その他病変:骨髄病変,膵病変, 胆道胆嚢病変など
‖ 除外診断
1)原因既知あるいは別の病態,例えば結核,悪性リンパ腫,その他のリンパ増殖性疾患,原発性,転移性悪性腫瘍などを除外する.
2)異物,癌などによるサルコイド反応を除外する.




















    

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