難病特集：肥満低換気症候群
肥満低換気症候群に対する漢方医学漢方薬の効果と経験症例
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‖概念定義
肥満低換気症候群(obesity hypoventilation syndrome:OHS)は肥満と高二酸化炭素血症を伴う。定義としては一般的にはBMI(body mass index:体重(kg)/{身長(m)}x{身長(m)})が30 kg/m2以上で動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)は45Torr以上である。低酸素血症を伴うとされる定義もあり、低酸素血症の程度としては動脈血酸素分圧が70 Torr未満とされることが多い。OHSの90%以上は睡眠呼吸障害、いわゆる閉塞型睡眠時無呼吸を伴う。約60%は睡眠1時間当たりの無呼吸低呼吸(無呼吸低呼吸指数)が30回以上の重症睡眠時無呼吸である。OHSは通常の肥満よりも医療費が多く必要で、心不全、肺高血圧、突然死が多く、肺胞低換気を合併した呼吸不全死を含めて予後がわるい。また、患者のQOLも悪いとされる。高度の肥満、傾眠傾向、周期性呼吸、チアノーゼ、多血症、右心不全のあるものをピックウイック症候群とされるが、同症候群には肥満低換気症候群のように厳密な数値的定義は存在しない。
‖疫学
厚生労働省の平成23年国民健康栄養調査結果の概要より、
15歳以上の日本人：1億1028万人中、
BMI ≧30 kg/m2 ： 3.9% （約430万人）
BMI ≧35 kg/m2 ： 0.5% （約55万人）
一般人口と受診者では背景が異なるが、本邦の代表的2施設を受診した、BMI ≧30 kg/m2 の693人中、OHSは13.0%、低酸素血症と重症OSAを伴うOHSは4.5%であり、日本全体で各々56万人、19万人、BMI ≧35 kg/m2 のうちOHSは22.9%、低酸素血症と重症OSAを伴うOHSは10.8%であり、日本全体で各々12.6万人、6万人 と推計される。
‖病因
肥満による胸郭の進展不良、腹部肥満などによる呼気予備量、機能的残気量の低下に代表される肺機能の低下、呼吸仕事量の増加、呼吸筋力の低下、睡眠時無呼吸低呼吸および呼吸を調節している高二酸化炭素に対する反応の低下などが考えられている。例えば肥満になると胸郭を進展することが困難となり、内臓脂肪の増加などによる横隔膜の拳上なども加わり呼気予備量、肺活量、機能的残気量が低下する。また、閉塞性換気機能障害などの気道系の異常を示すこともある。睡眠中の無呼吸低呼吸、低換気により夜間の血液ガスが悪化して、結果として呼吸調節機構が覚醒中まで鈍麻すると考えられているが、先天的要素など不明な点もある。
‖症状
肥満に関連する息切れ、睡眠中の呼吸障害の由来すると考えられる傾眠、血液ガスの悪化に伴うチアノーゼ、周期性呼吸、多血症、右室肥大、右心不全などがある。90%以上で睡眠時無呼吸を伴い、約60%は重症睡眠時無呼吸であり、夜間頻尿などもみられることが多い。日中の過度の傾眠傾向に加えて記憶力、作業能力の低下、易疲労感など重症閉塞型睡眠時無呼吸関連の症状を呈する。
‖合併症、予後
肥満関連疾患、閉塞型睡眠時無呼吸に伴う循環器系の疾患：高血圧、肺高血圧、肺性心、虚血性心疾患、心不全、脳心血管障害、糖尿病、脂質代謝障害などが高頻度に起こる。肺胞低換気(高二酸化炭素血症)を伴う呼吸不全も多い。日中の過度の過眠傾向はうつ病態と混同されることもある。特に、肺高血圧、心不全などが同程度の肥満よりも多く、ICU入院も有意に多いとされる。単なる肥満や睡眠時無呼吸に比して脳心血管障害、突然死などにより予後が悪いとされる。
‖治療法
減量が根本的な治療法となるが、減量は困難なことが多く、達成時期が不確定なため、高頻度にまた、重篤に生じている閉塞型の睡眠時無呼吸を持続気道陽圧(continuous positive airway pressure: CPAP)にて治療することは重要であり、CPAP療法によりPaCO2値の低下、低換気が改善されることが多い。低換気が高度の例ではCPAPではなく、非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation: NPPV)が当初用いられることが多く、軽快後、CPAPに移行することも多い。病態が重篤な場合、緊急時には挿管人工呼吸が行われることもある。また、CPAP、NPPVを使用しても高二酸化炭素血症が改善しにくい群も見られる。
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