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難病特集:ビタミンD受容機構異常症
       


ビタミンD受容機構異常症に対する漢方医学漢方薬の効果と経験症例
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■概念定義


皮膚で太陽光線の作用のもとに産生されるビタミンD3、あるいは食物中に含有され腸管から吸収されるビタミンD2やD3は、肝臓で25位に水酸化を受け25‐水酸化ビタミンD[25(OH)D]となる。この25(OH)Dは腎臓で更に1α位、又は24位に水酸化を受け、それぞれ1α、25‐水酸化ビタミンD[1.25(OH)2D]、24、25‐水酸化ビタミンD[24、25(OH)2D]となる。この内1.25(OH)2Dが、生体内で生理的作用を果たす活性型ホルモンであると考えられている。1.25(OH)2Dの作用の多くは、1.25(OH)2Dがステロイドホルモン受容体スーパーファミリーに属するビタミンD受容体(VDR)に結合し、このホルモン‐受容体結合物が核内のDNAに結合し特定の遺伝子発現を調節することによりもたらされる。このビタミンD受容体を介する情報伝達系の異常により1.25(OH)2D作用発現の障害される疾患が、ビタミンD依存性くる病(vitamin D dependent rickets;VDDR)-II型である。ビタミンDは血中のカルシウムリンの恒常性維持に重要な役割を果たしており、その作用の欠落は低カルシウム血症低リン血症となり、骨においては重症のくる病骨軟化症となる。また、皮膚の細胞分化にもビタミンDの作用は重要で、ビタミンD受容体の作用の欠落により約半数の例で禿頭を生じる。既に、モデル動物であるVDRKOマウスも開発されており、このマウスにおいても全身の脱毛が確認されている。
一方VDDR‐1型は、25(OH)D‐1α水酸化酵素の異常により1.25(OH)2D産生が障害される疾患であり、1997年にヒトの遺伝子CYP27B1がクローニングされ、現在までに20種類以上の変異が同定されている。本症は通常量の活性型ビタミンDで治療可能であり、ビタミンDの受容機構には異常は存在しない。


■疫学


VDDR‐II型は、世界的にも約50例の報告が認められるにすぎない稀な疾患である。約半数で近親婚、あるいは兄弟に同様の疾患が認められ、本疾患は常染色体性劣性遺伝の形式をとるものと考えられる。ヘテロと考えられる患者の両親は、臨床的には異常は認められない。


■病因


VDRは、1.25(OH)2Dの古典的な標的臓器である腸管や骨、腎細胞に加え、線維芽細胞や末梢血単核球など、多くの組織に発現している。
したがってVDDR‐II型患者における1.25(OH)2DのVDRを介する作用を、これらの組織を用いて検討することが可能である。すなわち[3H]1.25(OH)2D3と細胞質や核との結合を検討することにより、VDRのリガンド結合能や結合容量を、ウェスタンブロットによりVDR蛋白量を測定することができる。また1.25(OH)2D‐VDR結合物のDNAへの結合も評価可能である。更にin vitroでの1.25(QH)2Dの作用は、1.25(OH)2D3による皮膚線維芽細胞や骨細胞の25(OH)D‐24水酸化酵素活性の誘導や、骨細胞のオステオカルシン産生、末梢血単核球の増殖抑制作用、皮膚線維芽細胞のcyclic GMP産生などを指標として検討できる。これらの方法により、VDDR‐II型患者におけるVDRの異常がいくつかの種類に分類できることが明らかにされた。
すなわち、(1)ホルモン結合容量の低下したもの、(2)ホルモンに対する親和性の低下したもの、(3)ホルモン結合の認められないもの、(4)ホルモン結合容量や親和性は正常であるものの、(5)VDRの核への移行の認められないもの、(6)ホルモン結合容量や親和性は正常で核への移行も認められるものの、1.25(OH)2D-VDR結合物のDNAへの親和性の低下したものである。一方ヒトVDRcDNAのクローニングにより、VDDR‐II型患者のVDR遺伝子の変異を検討することが可能となり、現在までに10カ所の変異が報告されている(図1)。これらの変異の多くはエクソン2あるいは3のDNA結合領域とエクソン7のホルモン結合領域に集中している。
エクソン2や3のアミノ酸の置換は、ホルモン‐受容体結合物がDNAに結合する際に必要な2つのzinc finger領域に認められることから、1.25(OH)2D‐VDR結合物のDNAへの親和性の低下をもたらすものと考えられる。またArg‐274のLeuへの変異は、VDRの1.25(OH)2Dへの親和性を約1,000分の1に低下させることが示されている。VDRのC端側を欠如する変異によっても、ホルモン結合に障害をきたすと想定される。一方VDRの核への移行に障害の認められる患者では、VDR cDNAに変異の証明されない例も存在する。したがってVDR遺伝子自身の異常に加え、他の蛋白の異常によっても1.25(OH)2D作用障害からVDDR‐II型がもたらされる可能性がある。





■予後


原因となる遺伝子異常が単一ではなく、またこれにより活性型ビタミンD製剤に対する治療反応性も様々であることから、本症の経過も多様である。治療に反応し成長障害やくる病変化が改善するもの、また機序は明らかではないものの自然寛解するものから、乳児期に気道感染などにより死亡するものもある。本疾患の主要な徴候に禿頭があり、約半数の症例に観察される。このような例には重症例が多いとされる。また一般に本症は2歳以前に発症することが多いものの、40歳を越えてから発症した例も報告されている。これらの発症の遅い例は、血清カルシウム濃度に異常が認められず、本症の軽症例、あるいは不全型と考えられる。




















    

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