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難病特集:TSH受容体異常症
       


TSH受容体異常症に対する漢方医学漢方薬の効果と経験症例
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■概念定義

TSH受容体は甲状腺濾胞上皮細胞膜に存在するG蛋白質共役型受容体である。

 バセドウ病ではTSH受容体に対する自己抗体により甲状腺が刺激され甲状腺機能亢進症を起こす。逆に、TSHの作用を阻害する自己抗体により甲状腺機能低下症を起こす疾患もある。

TSH受容体自体の異常としては、TSH受容体の変異によりTSH受容体の活性化が起こり機能亢進を起こす場合(機能獲得型)と機能が抑制され機能低下する(機能喪失型)病態が報告されている。さらにG(Gsα)蛋白質に変異があり機能亢進を起こすことがある。

甲状腺機能亢進症を呈するものとして、TSH受容体あるいはG(Gsα)蛋白質の体細胞変異による機能性甲状腺腺腫(中毒性甲状腺腺腫や中毒性多結節性甲状腺腫)(プランマー病)とTSH受容体の胚細胞変異による非自己免疫性甲状腺機能亢進症がある。

一方、機能喪失型のTSH受容体変異によるものは、TSH不応症となり先天性あるいは成人発症例の原発性甲状腺機能低下症の原因となる。重症例は常染色体性劣性遺伝形式をとるが、高TSH血症のみを示す症例ではヘテロ接合体でも発症し、常染色体優性遺伝形式を示す。

■疫学

機能性甲状腺腺腫の日本における発生頻度は低く甲状腺機能亢進症全体の0.3%であり,これに対して米国では約2%、イギリス約5%、ドイツやスイスでは33%という報告があり、地域差が非常に大きく、欧州特にアルプス地方に多く、ヨード摂取量の低い地域で発生頻度が高い傾向にある。また、欧米では女性が男性の約5倍の発生頻度を示し高齢者に多い。

機能喪失型のTSH受容体変異によるTSH不応症あるいは先天性甲状腺機能低下症は稀であるが、最近わが国でも報告が続いている。
非自己免疫性甲状腺機能亢進症は、遺伝性、散発性のものを含めて報告は少数である。

■病因

機能性甲状腺腺腫の中には、TSH受容体の変異が細胞外ドメインから第4以外の膜貫通部位、特に第6膜貫通部位に多く報告されている。変異の検出率は報告により異なるが8~82%と高頻度である。日本の症例では40%以上という報告がある。

一方、Gsαの変異については、欧米では25~40%の頻度であることが報告されているが、本邦での報告は4~15%である。上記のように、変異TSH受容体あるいは変異GsαによりTSHの結合なしに持続的に甲状腺が刺激されているため、機能性甲状腺腫が形成されると推測されている。

TSH不応症をきたす病因としては、TSH受容体の構造異常の他にもGsα欠損、c-AMP以後のシグナル伝達の異常が推測されている。

非自己免疫性甲状腺機能亢進症は、TSH受容体に持続活性型変異が起こることにより発症する。遺伝形式は常染色体優性遺伝となる。

■症状診断

機能性甲状腺腺腫の症状は、血清TSH値のみが抑制され血中甲状腺ホルモン値は正常な潜在性甲状腺中毒症から明らかな甲状腺中毒症を示す症例まである。また、単発の甲状腺腺腫から多結節性の腺腫様甲状腺腺腫を触知する。診断には、甲状腺シンチグラフィーが有用である。

機能喪失型のTSH受容体変異によるTSH不応症では、血清TSH値のみが軽度高値を示す潜在性甲状腺機能低下症から甲状腺の低形成を伴う先天性の甲状腺機能低下症を示すものまである。

非自己免疫性甲状腺機能亢進症では、軽度から重度の甲状腺ホルモン過剰による症状を示す。

受容体異常症の確定診断にはTSH受容体遺伝子の解析が必要である。

■治療

機能性甲状腺腺腫に対しては手術による腺腫摘出あるいは131Ⅰ治療によるアイソトープ治療が行われる。高齢者で手術や131Ⅰ治療が選択できない場合は抗甲状腺剤の投与が行われる。我が国では一般に手術が、欧米では131Ⅰ治療が第1選択となっている。

TSH不応症による甲状腺機能低下症に対しては、甲状腺ホルモンの補充により甲状腺機能正常化をはかる。

非自己免疫性甲状腺機能亢進症に対しては、抗甲状腺剤、放射性ヨード、甲状腺摘出手術による治療が行われる。

■予後

欧米では、正常甲状腺機能の甲状腺結節を経過観察すると年間約4%で甲状腺中毒症を示すようになると報告されている。    

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