難病特集:成人スティル病
成人スティル病に対する漢方医学漢方薬の効果と経験症例
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■定義概念
若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis)のうち全身型は、小児の熱性疾患としてStill(1897)により記載されたステイル病と同じものである。ステイル病には成人発症例もあることが、Bywaters(1971)の報告以来知られている。16才以上を成人とするが、小児例と病像は同様,治療方針も同じである。小児発症で成人まで遷延した例と合わせて成人ステイル病と呼ばれ、本邦集計で成人例の88%が成人発症型であった。
■疫学
成人例の発症年齢は、本邦集計で20才前後をピークに年令とともに集計数が減少し、6割は16~35才に分布し、女性が男性の2倍である。高年齢では女性に偏り、稀に80才代の発症例もある。有病率約2/10万人の希少疾患である。
■病因病態生理と分子メカニズム
病因は未定であり、ウイルスを含む様々な病原体との関連を述べた症例報告が多数あるが、有力候補はない。特定のHLAアレルとの相関も報告はあるが、確定的なものがない。自己抗体は検出されないが、ステロイド治療が著効する炎症性疾患であり、自己炎症性疾患の病像と共通点が多い。血清中にインターフェロンγ、インターロイキン6(IL-6)、IL-1β、IL-18、腫瘍壊死因子(TNFα)。血清IL-18が著増し、血清フェリチン上昇と相関する。マクロファージ活性化に起因すると考えられている。
■臨床症状検査成績
関節炎:大中関節(とくに膝、手首)に多いが、指の小関節にもよくみられ、仙腸関節炎もある。小児特発性関節炎の全身型は関節疾患として定義されている。成人発症ステイル病で関節炎は診断条件ではないが、一過性のものを含めれば集計率は100%である。ふつう破壊性でないが、スワンネックを含む変形もみられ、一部の症例には関節リウマチと類似した骨びらんもみられる。
発熱:高い弛張熱、ないし間欠熱が必発であり、悪寒を伴うこともある。初期あるいは再燃しつつある時期には、回帰的発熱(平熱の日を含む)もみられる。
皮疹:サーモンピンク疹といわれる皮疹の“出没”が、スチル病の有力な証拠となる。膨疹または隆起のない径数mmの桃色の皮疹である。掻痒は一般にない。発熱時に出現し、解熱時に消退する傾向があるが、無熱時にもみられる。熱性病態に伴う皮疹をステイル病のものとみなすには、“出没”に注目する。
咽頭痛:発熱に一致してみられることが特徴的なので、かならず問診する。
リンパ節腫大:軽度から著しいものまで様々である。大きさは変動しうるが、そのことに特異性はない。
肝脾腫:スチル病で高頻度にみられる。ただし肝脾腫は、遷延したウイルス感染症、悪性リンパ腫にもみられる非特異的な所見である。
血球貪食症候群またはマクロファージ活性化症候群:初発時、再燃時ともにみられる。軽症から重症まで様々である。
その他の臨床像: 間質性肺炎、胸膜炎、心外膜炎が欧米症例で高頻度にみられ、本邦でも稀でない。稀に腎障害、肉芽腫性肝炎、急性肝不全、心内膜炎、麻痺性イレウス,末梢神経障害、顔面神経麻痺、頭蓋内圧亢進、無菌性髄膜炎がある。
検査所見
白血球増加:好中球の増加が高率である。著明な上昇は特徴的であり、類白血病反応もみられる。マクロファージ活性化症候群が合併すれば、白血球がむしろ低下する。
炎症反応: CRP上昇は必発である。
肝機能異常およびLDH上昇:高率にみられるが、ALT,ASTよりもLDH上昇の頻度が高い。
血清フェリチン上昇:高率に上昇し、しばしば著増する(>3000 ng/ml)。悪性リンパ腫、マクロファージ活性化症候群でも著増しうる。単球からマクロファージへの成熟時にフェリチンが産生放出されると推定されている。
血小板数の異常または播種性血管内凝固症候群(DIC):持続炎症の一般的な所見として増加するが、DICの合併では低下する。未治療のステイル病が、持続炎症状態で正常血小板数を示せば、DICが共存している可能性がある。
■治療
一般にステロイド治療に反応する良性疾患である。NSAIDsのみで寛解する例は少なく、ステロイド薬の中等量から大量(プレドニゾロン相当 1mg/kg/日、分割内服)が用いられるが、必要用量と期間は、症例ごとに異なるので一律のプロトコールは存在しない。初期量で熱性病態および炎症反応(CRP)が消失することを目安に、減量を始め、維持量で管理する。
トシリズマブ(抗IL-6受容体モノクローナル抗体)が小児ステイル病の標準治療薬となり、成人例に使用した文献報告もみられる。
■経過予後
良性疾患であるが、マクロファージ活性化症候群、DIC、前述の稀な合併症を生じたときは、重症化することがある。いずれも活動期にみられる。ときに、炎症が持続してアミロイドーシスを生じる例、関節炎遷延例がある。
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