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難病特集:重症筋無力症
       


重症筋無力症に対する漢方医学漢方薬の効果と経験症例
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‖概説


重症筋無力症は神経筋接合部のシナプス後膜に存在する分子に対する臓器特異的自己免疫疾患で、筋力低下を主症状とする。その標的分子の約90%程度はアセチルコリン受容体であり、筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)を標的とする自己免疫疾患も明らかになってきている。臨床症状は骨格筋の筋力低下で、運動の反復により筋力が低下する(易疲労性)、夕方に症状が憎悪する(日内変動)を特徴とする。主な症状は眼瞼下垂、複視などの眼症状、四肢前頸筋の筋力低下、構音障害、嚥下障害、重症例では呼吸障害である。


‖疫学


1987年の調査では推定有病率は人口10万人あたり5.1人で、全国患者数は約6,000人と推定されたが、2006年の全国調査では、有病率は人口10万人あたり11.8人、患者数は15,100人という調査結果がでた。男女比は1:1.7で女性に多い。発症年齢は、5歳未満に一つのピークがあり全体の7.0%になる。その後、女性では30歳、55歳にピークがあり、男性では10歳から65歳の間に好発年齢が広がっている。特別な地域や職業歴と重症筋無力症発症の因果関係はない。国の難病対策による特定疾患医療受給者証交付件数は、平成20年度 16,431、平成21年度 17.125、平成22年度 17,314である。


‖病因


神経筋接合部のシナプス後膜に存在するニコチン性アセチルコリン受容体に対して患者体内で自己抗体が作られ、この抗体により神経筋伝達の安全域が低下することにより、筋力低下、易疲労性があらわれる。本症患者の85%に血清中の抗アセチルコリン受容体抗体が陽性となるが、抗アセチルコリン受容体抗体価と重症度は患者間で必ずしも相関しない。患者ごとでは、抗体価と臨床症状に一定の相関が見られる。軽症例や眼筋型では抗アセチルコリン受容体抗体が陰性のことが多い。AChRの分子構造は解明され、アセチルコリン結合部位、抗体反応領域など詳細に解析されている。

本疾患と胸腺異常(過形成、胸腺腫)との関連に関しては数多くの報告があるが、まだ十分には解明されていない。

自己免疫の標的分子として、筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)の存在が明らかにされた。本自己抗体は、臨床的に重症筋無力症と診断できるが抗アセチルコリン受容体抗体は陰性である患者の約半数に陽性になるとされる。抗アセチルコリン受容体抗体と抗MuSK抗体がともに陽性となることは大変に稀である。最近、抗アセチルコリン受容体抗体を持つ患者にさらに骨格筋タンパクやイオンチャンネルに対する抗体の存在が明らかになってきている。骨格筋のE-C couplingに関連する蛋白質(リアノジン受容体、ジヒドロピリジン受容体)や電位依存性Kチャネル(Kv1.4)に対する自己抗体の存在が明らかにされている。これらの自己抗体は胸腺腫を合併した重症筋無力症でみとめられることが多く、胸腺腫合併重症筋無力症の免疫学的特異性が示唆されている。


‖症状


眼症状として眼瞼下垂や、眼球運動障害による複視がみられる。四肢の筋力低下は近位筋に強く、髪を梳かしたり、歯磨きでの腕のだるさ、あるいは階段を昇る時の下肢のだるさをみとめる。四肢筋の筋力低下よりも、嚥下障害や構音障害が目立つ患者もいる。これらは軟口蓋、咽喉頭筋、舌筋の障害による。患者により症状は多様であるが、一般的に眼症状(眼瞼下垂、複視)が初発症状となることが多い。重症例では呼吸筋麻痺により、低換気状態となる。


‖臨床


診断に結びつく臨床検査として、以下の3つがあげられる。

(1) エドロホニウム (テンシロン) 試験

(2) Harvey-Masland試験陽性 (誘発筋電図によるwaning現象)

(3) 血中抗アセチルコリン受容体抗体

また、胸腺異常の診断のため、胸部CTもしくはMRIによる検査が必要である。
合併症としては甲状腺機能亢進症や全身性エリテマトーデス、関節リウマチなどの膠原病を伴うことがある。


‖治療


(1) 胸腺腫例は可能な限り、根治的な拡大胸腺摘除術を施行する。

(2) 眼筋型はコリンエステラーゼ阻害薬で経過を見る場合もあるが、根治的にはステロイド療法が選択される。早期にステロイド薬を投与して治療することにより、全身型への進展を阻止できるとする意見がある。

(3) 全身型はステロイド療法や、併せて免疫抑制薬(カルシニューリン阻害薬:タクロリムス、シクロスポリン)の併用がなされる。ステロイド薬は初期に大量に使うことが一般的である。投与方法は、治療施設医師の判断で隔日投与もしくは連日投与が選択される。カルシニューリン阻害薬はステロイド薬に併用することで、投与ステロイド量を減少させることが期待できる。

(4) 難治例は、さらに血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイドパルス療法が併用される。


‖ケア


基本的に早期診断、加療が開始されれば良好な予後が期待できるので、初期治療が重要である。発症年齢は就業にあたる壮年期が多く、治療と就労との両立が課題となる。進行性の疾患ではないが、多くの例で長期的な内服療法が必要となるため、十分な患者教育が大切である。


‖食事栄養


嚥下障害を来す場合には摂食が困難となり、一時的に流動食や経管栄養などが必要となる場合がある。免疫療法の効果により、これらの症状は改善し、通常の経口摂取が出来るようになることが期待できる。


‖予後


早期診断と治療により80%の症例は軽快又は寛解する一方、残りの患者はADL、QOLの観点から十分な改善が得られず、社会生活に困難をきたすことも少なくない。






















    

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