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自己免疫性肝炎に対する漢方医学漢方薬の効果と経験症例
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自己免疫性肝炎と漢方


自己免疫性肝炎の概説

自己免疫性肝炎とは、既知の肝炎ウイルス感染、薬物などによらず自己免疫の異常が肝障害の原因の肝炎です。
自己免疫性肝炎はその発症、進展に自己免疫反応が関与している肝障害であると考えられます。
自己免疫性肝炎臨床的特徴としては女性に多く、検査所見で高ガンマグロブリン血症、抗核抗体をはじめとする自己抗体の陽性所見が特徴的で、免疫抑制薬特に副腎皮質ステロイドが良好な効果を示します。肝生検組織では一般に慢性肝炎像特に活動性を示し、形質細胞浸潤が特徴的とされています。免疫反応であるLE細胞現象が陽性の場合ルポイド肝炎とも呼ばれます。慢性肝疾患の原因としては日本ではウイルス肝炎が最も多く、自己免疫性肝炎の頻度は高くありません。しかし、ウイルス肝炎の少ない欧米では自己免疫性肝炎は慢性肝炎の重要な原因の一つとなっており、地域差が認められます。この原因の一つは人種差であり、日本では組織適合抗原であるHLA-DR4が自己免疫性肝炎と関連しているのに対し、欧米ではこれに加えてHLA-DR3が関連しています。日本国内で自己免疫性肝炎の地域差はないと思われます。自己免疫性肝炎と環境などの関連は不明です。
自己免疫性肝炎と診断される患者さんの80%以上は女性で、男女比は1:7で女性に多い病気です。
自己免疫性肝炎発症年齢は中年女性に多く40歳から50歳台が発症の中心となっています。欧米では10歳から20歳と40歳から50歳台とで多い2峰性を示しており、日本とは異なる分布を示します。この違いも主要組織適合抗原で示される人種差が関係しているものと考えられています。また、最近では60歳以上の高齢者での自己免疫性肝炎発症も報告されています。
  
自己免疫性肝炎の原因

1.遺伝的素因:遺伝的素因のある人にウィルスや薬剤による肝障害が起き、それが引き金となって自己肝に対する免疫反応が引き起こされると考えられています。免疫グロブリンの上昇、血清自己抗体が陽性、免疫抑制剤特に副腎皮質ステロイドが著効を示すなどの事実から自己免疫機序が自己免疫性肝炎の発病や進行に関わっていると考えられています。つまり、本来自分の身を守るための免疫が自己免疫性肝炎では肝臓の細胞を攻撃するようになり、結果として肝臓の炎症を起こしているのです。
  
2.誘因 :自己免疫性肝炎の明らかな誘因はわかっていません。多くの症例は検診での肝機能検査や、また、不定の全身倦怠感などで病院を受診、血液検査で異常を指摘されることで発見されています。

自己免疫性肝炎の特徴

1.慢性の経過をたどり、高γ-グロブリン血症、
2.女性の好発すること。
3.血清トランスアミナーゼ高値
4.血清タンパク分画・・γ-グロブリン分画の高値(2g/dl以上)
5.血清免疫グロブリン・IgGにお増加(2g/dl以上)
6.抗核抗体・陽性
7.抗平滑筋抗体・・しばしば陽性
8.抗LKM-1抗体・・ときに陽性
9.ウイルスマーカー・陰性

自己免疫性肝炎の病態

(自己免疫性肝炎)AIHでは肝細胞膜と反応する抗体が高率に陽性なので抗体依存性細胞障害よる肝細胞障害機序が考えられています。肝障害による血中のGOT、GPTの上昇がみられ、重症の場合は黄疸も認められます。自己免疫反応の結果として血中ガンマグロブリンが上昇、IgGの上昇(2000mg/ml以上)、さらに自己抗体が陽性となります。陽性自己抗体としては抗核抗体が最も多くみられ約90%以上の患者さんはこの抗核抗体が陽性です。しかし、この抗核抗体は自己免疫性肝炎に特徴的に認められるものではなく他の疾患、例えばSLEでも95%が陽性となりますので、この抗核抗体が陽性となったからといって自己免疫性肝炎とは診断できません。他に抗平滑筋抗体も陽性となることがあります。

自己免疫性肝炎の病理

門脈域への単核球の浸潤、piecemeal necrosisなどの慢性活動性肝炎の像を示すが、形質細胞の浸潤を認めることも多く、AIH組織像の特徴とされています。

自己免疫性肝炎の検査

1.血中自己抗体(特に抗核抗体,抗平滑筋抗体など)が陽性
2.血清γ-グロブリン値またはIgG値の上昇(2g/dl以上)
3.持続性または反復性の血清トランスアミナーゼ値の異常
4.肝炎ウイルスマーカーは原則として陰性
5.組織学的には肝細胞壊死所見およびpiecemeal necrosisを伴う慢性肝炎あるいは肝硬変であり,しばしば著明な形質細胞浸潤を認める.特に急性肝炎像を呈する。

自己免疫性肝炎の診断

1.倦怠感
2.黄疸
3.食欲不振、関節痛、発熱など

自己免疫性肝炎初診時には多くの自己免疫性肝炎患者さんが何らかの症状を訴えます。最も多いのは倦怠感で約6割の自己免疫性肝炎患者さんが訴えます。慢性ウイルス肝炎に比し黄疸を訴える自己免疫性肝炎患者さんは35%と高頻度です。自己免疫性肝炎他の症状としては食欲不振、関節痛、発熱などがあります。関節痛、発熱は通常慢性ウイルス肝炎で認められることは少なく、これらの症状とともに肝障害が認められた場合自己免疫性肝炎を考える必要があります。また、甲状腺機能低下、関節リウマチなど他の自己免疫性疾患が合併する場合も少なくありません。 一方、こうした症状を全く示さず、血液検査での異常をきっかけに発見される自己免疫性肝炎患者さんも少なからずあります。

自己免疫性肝炎診断基準(1987年、厚生省特定疾患難治性の肝炎調査研究班)

[A]概念:
「女性に好発し、」
「早期に肝硬変への進展傾向を示す慢性活動性肝障害であり、その病因としては自己免疫性機序が想定され、ウイルス、アルコール、薬物などは除外される。」
「上、コルチコステロイドなどの免疫抑制薬の有効性が特徴である。」

[B]診断基準:
 1.主要所見:
  1.持続性または反復性の血清トランスアミナーゼ活性の上昇。
  2.血清γ-グロブリン値またはIgG値が2g/ml以上。
  3.自己抗体の陽性:(A)or(B)
   A.E細胞現象が陽性:自己免疫性肝炎のうちLE細胞減少陽性の場合『ルポイド肝炎』と呼ぶことがある。
   B.抗核抗体陽性またはLEtest陽性。
  4.IgM anti-HA陰性+HBs抗原陰性+anti-HBc陰性または低力価。

 2.副所見:
  1.発熱、関節痛、発疹などのsysytemic manifestationを認める。
  2.膠原病を含む自己免疫性疾患の合併。SLEが疑われる時は、3.を満たすことと、尿タンパクが陰性であることを確認する。
  3.検査所見:(A)or(B)
   A.血沈の亢進(30mm/h以上)
   B.CRPの陽性。

 3.肝生検にて時に小葉改築傾向を示すこともある
  活動性の慢性肝炎、肝硬変或いは亜小葉性壊死を認める。
  著明な形質細胞の浸潤を認めることが自己免疫性肝炎の特徴である。

 4.診断:
 (1)のすべての項目+(3)を満足する場合(確診)
 (1)のすべての項目を満足する場合(確定を疑う)。
 (1)のすべての項目を満足し、(2)のうち1項目を認めた場合(極めて疑わしい)


[C]除外規定:「肝生検所見で以下の疾患と鑑別できる。」
 1.膠原病に合併するウイルス性慢性肝炎
 2.薬物性肝炎

自己免疫性肝炎の西洋医学的な

自己免疫性肝炎(AIH)は肝細胞障害に自己免疫機序が関与していると考えられる肝炎で、ステロイドなど免疫抑制剤がとして有効です。自己免疫性肝炎に対しては、他の自己免疫疾患と同様、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤が通常用いられます。欧米では、初期から副腎皮質ステロイドとアザチオプリンといった免疫抑制剤を併用しますが、本邦では副腎皮質ステロイドを30mg から40mg/日で開始し、AST、ALT 値の低下とともにゆっくりと漸減していきます。一部の症例では、副腎皮質ステロイドを中止することも可能ですが、減量とともに、肝機能が悪化し (再燃) 、副腎皮質ステロイドの投与を長く続けることが必要な場合もあります。副腎皮質ステロイドの効果が不十分で肝機能のコントロールがつかない場合、あるいは副作用で使用できない場合は、アザチオプリンや6-MPといった免疫抑制剤を使用します。また、劇症肝炎様の経過を辿る重症例では、副腎皮質ステロイドを大量に用いる場合 (パルス療法) もあります。
副腎皮質ステロイドには、消化性潰瘍、糖尿病、骨粗鬆症といった副作用があり、これらの副作用に対しても予防薬投与が必要です。また、投与によりムーンフェイスにもなります。
また、最近ではウルソデオキシコール酸 (ウルソ) を軽症例の自己免疫性肝炎や副腎皮質ステロイド剤を減量、中止するために用いる試みもなされています。

自己免疫性肝炎の予後

自己免疫性肝炎発病は一般に緩徐であり、自覚症状は軽微な場合が多いとされています。しかし、を行わないとその進行は早く、肝硬変になります。適切なを行えば、肝臓の炎症は良く改善し、進行もみられなくなります。日本での調査ではをきちんと受けている場合、10年の経過では殆ど進行はないようです。また、死亡率も高くありません。
自己抗体の種類によって、I 型 (抗核抗体または抗平滑筋抗体陽性) と II 型 (肝腎ミクロゾーム1抗体陽性) に分類されますが、日本ではほとんどが I 型自己免疫性肝炎です。
自己免疫性肝炎は、急性肝炎様に発症する場合と慢性の経過を辿る場合がありますが、前者では若年女性に多く、劇症肝炎様の経過を辿り予後不良であることが多く、早急なが必要です。慢性の経過を辿る場合は、健康診断等で指摘されることが多く、に反応しやすいですが、初診時にすでに肝硬変となっているケースも少なくありません。






    

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