難病特集：若年性肺気腫
若年性肺気腫に対する漢方医学漢方薬の効果と経験症例
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‖概念定義
旧来、COPD（Chronic Obstructive Pulmonary Disease）は肺気腫と慢性気管支炎からなる疾患と定義されていたが、現在ではタバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であると定義されている（COPD診断と治療のためのガイドライン第3版；日本呼吸器学会2009）。呼吸機能検査では正常に復すことのない気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変が様々な割合で複合的に作用することにより起こり、進行性である。臨床的には徐々に生じる体動時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とする。
厚生労働省呼吸不全に関する調査研究班が平成19年度(2007)に行った全国アンケート調査の際には、喫煙者(断煙者を含む)では50歳以下、非喫煙者では60歳以下を若年発症COPDと定義し調査を行っている。しかし、肺移植の適応が両肺55歳未満、片肺60歳未満であることから、現在、厚生労働省呼吸不全に関する調査研究班では、若年発症重症COPDを次のように定義し、データを集積中である。
喫煙歴を問わず、55歳以下で発症発見され、完全には可逆的でない気流制限を呈する患者
55歳以下の時点で、安定期に測定した呼吸機能で、気管支拡張剤吸入後にFEV1/FVC＜70% かつ ％FEV1＜50％
‖疫学
厚生労働省の患者調査によれば、平成8年(1996)～平成17年(2005)のCOPD患者数は21～22万人と大きな変動はない。これに対し、住民調査による大規模なCOPD疫学調査、
NICE study (Nippon COPD Epidemiology Study)の結果からは日本人の40歳以上の8．6％(約530万人)がCOPDに罹患していると推測されている。
平成19年度(2007)に行われた厚生労働省呼吸不全に関する調査研究班の調査結果から2190名の若年発症COPD患者が存在すると考えられているが、50歳未満でHugh-Jones II度以上かつ％FEV1が50%未満に限ると、100名弱と推測されている。新基準による疫学調査結果では、有効回答のあった816施設と同じ比率で、全医療機関から回答を得たと仮定して補正をすると、若年発症重症COPDは559人と推定された。
‖病因
COPDの原因物質はタバコ煙などの大気汚染物質であるが、喫煙者全員がCOPDを発症するわけではない。COPD患者においては、タバコ煙などの有害物質による気道や肺の炎症反応が増強しており、この反応の差には、遺伝的素因、プロテアーゼアンチプロテアーゼ不均衡、オキシダントアンチオキシダント不均衡などが関係している。
前述の若年発症COPDに関する調査では、喫煙歴のないものの割合は5.1%であった。
‖症状
若年発症COPDに特有の症状はない。通常のCOPDと同じで、労作時呼吸困難、慢性の咳嗽喀痰が主な症状である。また近年では、COPDが肺以外にも全身性の影響を及ぼすことが明らかになってきた。全身性炎症、栄養障害、骨格筋機能障害、心血管疾患（心筋梗塞、狭心症、脳血管障害）、骨粗鬆症（脊椎圧迫骨折）、抑うつ、糖尿病、睡眠障害、緑内障、貧血などが知られている。2010年に発表された海外論文（Burgel, et al. Eur. Respir. J. 2010; 36:531-539）では、統計学的手法を用いることにより、「若年重症」、「高齢中等症」、「若年中等症」、「高齢重症」に分類できると報告している。同報告によると、「若年重症COPD」の特徴は、閉塞性障害が高度で栄養状態が悪く、うつやQoLの障害が顕著である一方、心不全は合併しないとされている。
‖治療
若年発症COPDに対する特別な治療戦略は存在せず、通常のCOPDの治療に準ずる。すなわち、安定期では禁煙、インフルエンザワクチン、全身へ依存症の管理を行いつつ、重症度を総合的に判断し、呼吸リハビリテーション、薬物療法、酸素療法、補助換気療法、外科療法などを選択する。ただし、若年発症COPDの場合には、条件を満たせば肺移植も治療法の一つとなりうる。
‖予後
若年発症COPDに関する予後は未だ明らかにはされていない。今後のデータの蓄積が待たれるところである。
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