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難病特集:膵嚢胞線維症
       


膵嚢胞線維症に対する漢方医学漢方薬の効果と経験症例
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‖概念定義
膵嚢胞線維症(嚢胞性線維症:CF)はcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)遺伝子変異を原因とする常染色体劣性遺伝性疾患である。汗のクロライドイオン(Cl-)濃度が高くなり、外分泌液が著しく粘稠となる。粘稠な膵液により膵管は嚢胞状に拡張し、膵臓は線維化する。膵外分泌不全による消化吸収障害がおきる。粘稠な気道分泌液のため痰の喀出が困難となり、呼吸器感染を繰り返し、呼吸不全となる。
‖疫学
白人では最も頻度の高い遺伝性疾患(出生約3,000人に1人)であるが、日本人では極めて稀である。第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査では2009年の受療患者数は15名(95%信頼区間12〜18)、1年間の受療頻度は約150万人に1人と推定されている。
‖病因
CFTR遺伝子は第 7染色体上に存在し、27のエクソンをもつ約230 kb の遺伝子である。CFTRはl480アミノ酸残基よりなるタンパク質で、cAMPにより調節されるクロライドイオン(Cl-)チャネルである。CFTRは全身の上皮膜組織に発現している。これまでに1500以上のCFTR 遺伝子変異や多型が報告されている。CFTR遺伝子変異によりチャネルタンパク質が(1)合成されない、(2)一部が欠失する、(3)細胞膜に発現しない、(4)開閉できないなどの変化がおこると、細胞膜をCl-が通過できない。その結果、汗のCl-濃度が上昇し、消化管や気道の粘膜で水が分泌されにくくなるため分泌液が粘稠となり、様々な症状が生じる(図1)。消化管では新生児の胎便性イレウス、膵外分泌不全による消化吸収障害の結果、脂肪便、栄養不良や低体重が生じる。細気管支に粘液栓が形成され、細気管支炎や気管支炎を繰り返すため、慢性の咳と痰が続く。慢性副鼻腔炎とブドウ球菌や緑膿菌の持続性感染は特徴的であり、気管支拡張症、肺高血圧症や肺性心を伴う呼吸不全を生じる。両側輸精管の形成不全による男性不妊症が生じる。
クロライドイオンチャネル機能が5%以下になるような変異が、2つの対立遺伝子に存在した時に発症する。両親は健常なCFTR遺伝子と変異遺伝子をもつ保因者である。劣性遺伝するのでメンデルの法則に従い、子供が発症する確率は25%、保因者である確率は50%、健常人である確率は25%である。保因者は発病しないが、慢性気管支炎や慢性膵炎などCFTR関連疾患の発症リスクが高い。

 膵嚢胞線維症と関連する病態と疾患

汗のCl-濃度の上昇と共に、膵嚢胞線維症、重症慢性気道感染症、胎便性イレウス(腸閉塞)、肝硬変、慢性副鼻腔炎、鼻ポリープ、慢性膵炎、先天性両側精管欠損症(男性不妊症)など様々な症状を示す。(大槻、成瀬編「膵嚢胞線維症の診療の手引き」アークメディア、2008年より引用)
‖診断
汗のCl-濃度の上昇(CFTRチャネルの異常)に慢性の咳と痰(慢性の気道感染)、脂肪便(膵外分泌不全)、胎便性イレウス(消化管の閉塞)などの症状または本症の家族歴があれば、膵嚢胞線維症(嚢胞性線維症)と診断する。既知の変異が2対のCFTR遺伝子に同定されれば、遺伝子診断が可能である。しかし、日本人では稀な変異が多く、全翻訳領域の遺伝子配列を検査しても変異が発見できないこともある。
‖治療
現在のところ根本的治療法はないが、米国では個々のCFTRチャネルの機能異常に対する改善薬の開発が進められている(日経サイエンス 2011年11月 p.88-95)。良好な栄養状態を保ち、長期間にわたる呼吸器や消化器疾患の予防と治療が重要である。
最近、高力価の消化酵素(リパクレオン®)、気道粘液の粘稠度を低下させるDNA分解酵素(プルモザイム®)およびトブラマイシンの吸入薬(TOBI®)が承認され、栄養と呼吸状態の改善が期待されている。全例の副作用調査が必要であるので、製造販売元との契約を要する。

呼吸器感染症が生命予後を決定する。気管支拡張剤、粘液溶解剤の吸入療法や胸郭のタッピングや体位ドレナージにより、粘稠な気管支分泌物を積極的に除去する。呼吸器感染を起こした場合には、速やかな抗生物質による治療が必要である。安定期にもDNA分解酵素とトブラマイシンの間歇吸入療法により、緑膿菌などによる気道感染を日常的にコントロールすることが重要である。

胎便性イレウスに対しては,高浸透圧性造影剤(ガストログラフィン)による浣腸を行うが、手術が必要なことも多い。膵外分泌不全による脂肪便に対しては消化酵素の補充療法を行う。消化酵素の内服が困難な乳幼児には、恩賜財団母子愛育会よりCF用ミルクが入手できる。発汗過多による塩分喪失と脱水に陥りやすいので、気温が高い時には水分と電解質を充分摂取する必要がある。
診断や治療の具体的内容については難治性膵疾患に関する調査研究班より出版された「膵嚢胞線維症の診療の手引き」(大槻眞、成瀬達編、アークメディア、2008年)が参考になる。
‖予後
呼吸器感染症および呼吸不全が主な死因である。診断と治療の進歩により成人に達する患者も増加してきたが、依然、平均生存期間は約18年と短い。現在審査中の上記治療薬が市販されるようになると、米国の患者の平均生存期間(約37歳)に近づくと期待される。
‖ 膵嚢胞線維症(嚢胞性線維症)登録制度(新規)
難治性膵疾患研究班では、2012年10月より主治医に最新の診断と治療に関する情報を提供するために主治医、相談医および相談施設の登録制度を開始した。登録制度事務局(名古屋大学健康栄養医学研究室)のホームページ(http://www.htc.nagoya-u.ac.jp/~ishiguro/lhn/cftr.html)にサイトマップすると、登録方法や本症に関する最新の情報が得られる。
‖ 第4回膵嚢胞線維症全国疫学調査
「難治性膵疾患に関する調査研究班」では、わが国における膵嚢胞線維症の実態を把握するため、2009年1年間ならびに過去10年間の膵嚢胞線維症患者に関する第4回全国疫学調査を実施した。年間受療患者は15名、過去10年間の患者数は44名程度と推定された。これは前回調査(2004年)とほぼ同様の結果であった。




















    

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